ピクサー流-創造するちから[創作の不安を乗り越える!]

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トイストーリー・ファインディングニモなどで有名なピクサー。

この本は創作活動をしている人には目から鱗のようなことが山ほど書いてて、創作で不安になった時に読むと、思わず笑えてくるレベル(笑)

いかにして良い企画を練り、良いアイデアを出し、良い作品に仕上げるか?っていう課題について、ありとあらゆる視点から考察しています。

 

ピクサー流-創造するちから[創作活動をしている全ての人へ]

まず最初に、この本を簡単にまとめておくと、こんな感じです。

①ピクサーがいかにしてアイデアを出しやすいように人を大切に扱っているか

②本音で言いたいことを言い合えることの大切さを広めているか

③失敗に対していかに寛容で前向きになれるか

④なぜ入念な計画が危険か(行動しながら学んでいくことの重要性)

➄偶然の大切さ

⑥創作の不安を乗り越える方法

こんな感じで創作の本質的な部分をこれでもかというレベルでえぐり出している本です。

この本のすごいところは、"創造"の意味を明確に定義していないところ。

創作では明確な正解っていうもんが存在しないけど、それに近いものは何か?っていうことを追求した本になっています。

①アイデアを出しやすいように人を大切に扱う

まず、ピクサーが拠り所にしている考え方が2つあります。

1つめが、「Story Is King(物語こそが王、全ての軸だ)」です。

ストーリーこそが全ての軸になる要素で、それ意外の要素(キャラクター・キャスティング・映像技術など)にストーリーを邪魔されないようにする。

撮影環境とか、有名な俳優起用とか、そんなもんは細部に過ぎないんだぞ!ってことを強調してるのかなと思います。

最近読んだハリウッド脚本家などの本でも、どれも主張が似ていて、「ハイコンセプトが命!素人が書いた脚本だと、どんなに他の要素が良くても台無し!」ってことを散々言ってます。

最近のゲームにも言えるけど、グラフィックに力を入れ過ぎて、肝心な中身が空っぽな作品って結構あるわね...。

2つめが、「Trust The Process(過程を信じよう)」です。

ピクサーはアイデアの出し方、不安への向き合い方など、いかにメンタルを落ち着けて、1人1人の社員が集中して創作に取り組めるかというプロセスをめちゃくちゃ大切にしているようです。

そういった独自のプロセスに従って、信じていけば、きっと上手くいくと信じることが大事!

単なる楽観主義ではなく、創作で必ず起こるような障壁・問題への対処法やマインドセットという、完成までこぎつけるための現実的な考え方が大事。

ってなことが書かれています。

実際、創作っていうのは安心感がめちゃくちゃ重要で、「これでいいのか?不安や...」みたいな感じでメンタルが揺さぶられたりすると、創造性っていうのは大幅に下がっちゃうことが研究でも分かっています。

精神論ではなく、科学的にもネガティブ思考・感情が創造性を大幅に下げることは分かってるんすね。

ってことで、実際にこの本ではこう書かれています。

アイデアは人から生まれるものだ。だから、アイデアよりも人の方が大切だ。(p.113)

だからこそ、ピクサーは個人を大切にしていて、心身ともに健康に気を配る制度が出来ているようです。

締め切りに追い込まれて疲労困憊にならないように、プレッシャーを落ち着かせたり、心身の健康を整えるような環境作りをしています。

とにかく、長い目で見て社員を酷使することの危険性を強調してる感じ。

そもそも、人を大事にせず、社員の抱える心理的なプレッシャーが大きいままだと、結局は良いアイデアにもつながらず、企画が台無しになることもあるっていうのは、なんとなく分かるなあ。

やっぱり創作ではメンタルが超重要なんすよねえ。

②本音で言いたいことを言い合えることの大切さ

 社員がアイデアや意見、批評を気兼ねなく交換できるのが創造的文化の証だ。率直さが欠けていると、組織として機能しなくなる可能性がある。(p.125)

率直に意見を出し合うことで、アイデアの方向性がおかしくなったり、変な方向に偏ってしまわないように気を付けています。

そのためにも、数か月置きにブレイントラストを行ってるらしい。

やり方はいたってシンプルで、一切遠慮はせずに、問題を発見して解決するための意見を出し合うだけ。

これは、制作中の作品について率直に話し合って、より妥協のない作品に仕上げていくことを目的にしているそうです。

「下らんこと言ってないかな...」とか、「これ言ったら不機嫌にならないかな...委縮しそうで怖い...」とか、「やったらやり返されるんじゃ...」みたいな不安があることを、みんなで理解したうえで、全員が受け入れ態勢を作ってから言い合うのがポイント。

いったん、上下関係とかも忘れて、みんなで失礼な人間になろう!ってことです(笑)

実際、あのピクサーですら、謙遜抜きでこう言ってます。

率直さほど重要なものはない。どの映画も、作り始めは目も当てられないほどの駄作だからだ。(p.130)

創作は、色々と不完全な状態から始まるから、どんどん改善していく過程が大事だぞ~ってことを強調してます。

自分も今になって思うと、処女作(2月に発売されたバイノーラル音声)に関しては右も左も分からない状態からのスタートだったので、目も当てられないほどの出来だなと思います(笑)

それでも、改善点が山のようにあったし、ゼロから脚本を学んだおかげで、他人に読みたいと思わせられるような脚本が書けるようになってきました。

あと、アイデアの批判は人格否定ではなく、そのアイデアを批判してるだけに過ぎないんだぞ~ってことも強調してます!

アイデア、ひいては作品は、批評にさらされ、もまれてこそ価値がある。(p134)

人とそのアイデアは別物だ。

アイデアを自分のことのように考えてしまう人はアイデアを批判されるとムッとする。

健全なフィードバック体制を築くには、そのイコールの関係を排除する必要がある。

人ではなく、問題を見るようにするのだ(p135)

③失敗に対していかに寛容で前向きになれるか

まちがいは、新しいことを試みたすえの当然の結果だ。

だからその価値が認められるべきだ。それなくして独創性はない。(p154)

間違えるのは早ければ早いほど良い。

失敗は自転車の乗り方を覚えるのと同じだ。

何度かつまづたり倒れたり、つまり誰も失敗しないで乗れるようになるとは誰も思っていない。

新しいことにチャレンジする時に同じ気持ちで取り組めば、失敗のマイナスイメージを徐々に払拭できる。

p155)

とにかく、チーム全体で積極的に失敗をしていこう。

失敗は前に進んでいる証拠っていう価値観を全員が共有しています。

失敗は絶対に起こるから、まずは行動しながら学んでいくことの重要性をなんっかいも説明してました。

道は選ぶだけじゃなくて、実際に進まなきゃ意味がないし、そうやって道に進んでいる間に、歩き始める前は見えなかった景色が見えてくる。

見たくないこともあるかもしれないけど、たとえ間違った場所に出ても、それは無駄にはならない。

見たくない景色だったとして、そこで得たアイデアは後で必ず役に立ってくれる。(p158)

実際に、モンスターインクの原案も、かなり違ったものになっていたらしい。

当初は、会計士の仕事が嫌で仕方なく続けている、30歳の冴えない男が、子供の頃に描いた絵を母親から渡されて、それ以降、自分にしか見えないモンスターたちと戦っていく。

そのモンスターたちの正体は、自分が子供の頃に向き合わなかった恐怖心の象徴で、それを受け入れていくに連れて、モンスターたちと仲良くなって、次第に消えていくという物語だったようです。

人を驚かせようとする化け物・サリーと幼児のブーが出会い、友情を交わしていくストーリー構成になったのは後のことだったようです。

そのブーも男にしたり、少女にしたり、色々試行錯誤したらしい。

こんな感じで、ピクサーみたいなすごい才能あるメンバーが集まっているチームでも、何年もかけて大筋を変えていった結果、ようやく、しっくりくる作品へと仕上がっていったようです。

だからこそ間違いを恐れずに、失敗しながら進んでいく必要があるんだよーってことを説いてます。

実験的にアイデアを出していく作業を、無駄で生産性のないものと考えるんじゃなくて、その繰り返しが良い作品へとつながっていくから、「実は無駄なんてない。実験していくワクワク感を楽しもうぜ~」っていうメッセージを感じました。

④なぜ入念な計画が危険か

行動を起こす前にすべての動きを決める、つまり後で失敗がないよう時間をかけて慎重に計画するのがいいと思っている人は、勘違いをしている。

すでにあるものをコピーしたり繰り返したりする作業ならば計画を立てやすい。

だからもし、入念で確実な計画を立てることが一番の狙いならば、得られる成果は独創性に欠けるだろう。

しかも、どれほど入念に計画しても問題は避けられない。

クリエイティブな環境では、コントロール出来る範囲は限られる。

(p161~162)

大まかな計画を立てた段階で行動に移して、行動していく中で改善点を見出して、どんどん当初の計画も修正して、さらに行動していく感じ。

計画を緻密に練ったところで、後になってイマイチだな~っていう部分が必ず現れるのが創作だから、まずは手を動かしながら、頭も動かせってことですね。

創作に関しては、自動車を作るとか飛行機を作る、みたいに初期段階で失敗が許されない分野ではないので、むしろ失敗できるメリットを活かしたいな~と改めて思いました。

 

➄偶然の大切さ

安心感や予測可能性の誘惑は強いが、本当の意味でバランスをとるとは、成果や見返りがまだ明らかでない活動に取り組むことを意味する。本当にクリエイティブな人は、不確実性と隣り合わせの仕事をする覚悟がある。(P.244)

未知の世界を徐々に探索していくのが創作なんだから、不安と手をつないでいくことを受け入れれば、本当の意味で独創性のある作品にたどり着いていくっていう強いメッセージ。

自己満足で完結するなら、な~んも不安がないわけですが、ネット上で同人誌を作ったり同人音声を作ったりする場合だと、当然ながら数万~数十万の製作費がかかるし、データとして一生残るので、ある程度の売上が見込める必要があるわけですが、そういった結果にとらわれ過ぎると失敗するよーってことですね。

一般的にウケている無難な作品を作ろうとすればするほど独創性がなくなり、面白みに欠けてしまうっていうジレンマです。

それが、ここで書かれている本当の意味でのバランスってことですね。

自分も、恥を捨ててぶっ飛んだ台本を書いてます(笑)

それが創作でヒットさせることの本質なのかなと思って、日々執筆しております。

⑥創作の不安を乗り越える方法

監督や脚本家と話をしていると、頭の中にどんなメンタルモデルを持っているかがわかり、いつも感銘を受ける。

それぞれのユニークなメカニズムを使って前進し続け、逆境を乗り越え、目標を追求している。

ピート・ドクター(「モンスターズ・インク」の監督)は、監督業を「延々と続く終わりの見えないトンネルを、最後には無事に抜けられると信じて走ること」にたとえる。

創作の不安を何かに例えることを、この本ではメンタルモデルっていう用語で定義しています。

創作は常に未知の探検・アドベンチャーの世界なので、時々尻込みしたり、ビビってしまったり、アイデアがなーんも出なくて頭がすっからかんの空っぽになることもあります。

さっきも書いたように、自己満ではなく、ある程度の結果が必要な場合だと、結果が分からないっていう不確実性をいかにして受け入れるかという問題が起こります。

作品が完成せずに終わるかもしれないし、作品を受け入れられず酷評される可能性もあるし、採算が取れずに経済的に損をする可能性もあるし、逆に大ヒットする可能性もあるし、ヒットしても叩かれる可能性もある。

そういった複雑な未知の不安をいかにして乗り越えるかという、メンタルモデル(思考の枠組み)を用意しておくことで、不安から生じるネガティブな感情に押しつぶされにくくなります。

なんでもいいから、ゴールまでの不安を確かな形として捉えようってことですね。

他にも取り上げたかったピクサー語録

ものを作るには、いっときそのものになりきるくらいに入り込む必要があり、ほぼ一体化した状態になって始めて、本当に作りたかったものが見えてくる。

だが、それは一筋縄ではいかない。

監督も脚本家も、1度は見えていたはずのものが途中で見えなくなる。

以前はちゃんと森が見えていたのに、今は木しか見えない。

ディテール(細かい部分)に寄りすぎて全体が見えなくなり、そのせいで、これだという方向に自信を持って進むことが出来ない。

その経験は例えようのないものだ。(p131~132)

どんな効果的なフィードバックグループ(意見・感想)もそうだが、そこで得られた視点を自分に抗うものではなく、プラスになると考えることがカギになる。

競争意識があると、人のアイデアと自分のアイデアを比較するため、議論ではなく、勝ち負けを決める討論になってしまう。(p145)

一般的に言って、やり方を考えることにエネルギーを注ぎ、行動に移すのは早すぎると言っている人は、何も考えずにどんどん進める人と同じくらいの頻度で失敗している。

計画が入念すぎる人は、失敗するまでに人より時間がかかる(そしてつまずいたとき、失敗したという感情に押し潰されやすい)。

これも当然の結果だ。

時間をかけて考えたぶんだけ、そのやり方に対する思い入れが強くなる。

それがぬかるみのわだちのように頭の中で凝り固まる。

そこから抜け出せなくなり、一番やらなくてはいけない「方向転換」が困難になる。

(p162)

まとめ

創作をするうえで大切なことは全てここに書いてあります。

クリエイティブ系の企業なだけあって、組織論なのに堅苦しさがあんまりないのも良いところ。

そもそも、組織論とは言っても個人レベルでも役に立つ情報だらけで、まさに創作のバイブルです。

創作って新しいものを生み出すわけなんで、やっぱりすんごい不安が生まれるし、ピクサーみたいな超一流でも、「白紙の状態から何かを生み出すのが怖い...筆が進まん...」と感じることはあるみたいです。

前に書いたように、この現象は本能レベルで起こることも分かっていて、まさに未開の地を開拓していくような感覚です。

創作活動をする過程では、恐怖・ワクワク感・不安・勇気とか、色んな感情がごちゃ混ぜになったりします。

最後まで、創作におけるメンタル管理の面で学べることがめちゃくちゃ多いし、アイデア作りの秘訣も学べるので(合計400ページほど)、自分のように創作活動をしている人は是非読んでみてはいかがでしょうか〜